お散歩から帰ってきたあやのがまずすることといえば、夕食の準備に他ならない。
なにせ、食べるわ食べるわどこまでも食べるわ、という旦那と雷電2匹がいるのである。
「つばさ、ちゃんといい子で寝ててね」
ほっぺをぷに、とつっつけば、すやすやと寝息を立てているつばさは返事でもするかのようにその指をにぎり返した。
そんなつばさを起こさないようにそっと指をはずして、あやのは台所に立った。
おもむろに食材を刻み始める。
今日の予定はハンバーグだ。
見る間に大量のタマネギがみじんぎりになって大きなボウルに入れられていく。
あやのの家事の大半は、食事の用意に費やされているといっても過言ではないかもしれない。
だがしかし、毎日がんばって働いている旦那様とその相棒にはやっぱりおいしいご飯を食べてもらいたい。
その思いのおかげか、日に日に食事の準備の時間が短くなっているというのは、やはり愛のなせる業だろう。
「うん。今日の準備もこれでいいかな」
大量のハンバーグを焼き終わり、お皿に盛り付け終わったところで玄関から声が聞こえた。
「ただいまー」
「あ、健司くん、おかえりなさい!」
ぱたぱたと玄関へむかうあやの。
そのまま、健司にぎゅーと抱きついた。
「はらへったー」
「ご飯ちょうどできたところだよ」
「がう」
「がぅ」
あやのの言葉に、グリンガムOOとクール=ミントが先に返事をした。
「おー」
「あ、つばさもちょうど起きたみたいだし、みんなでご飯にしよう」
「おう」
あやのはつばさを抱っこすると用意してあったミルクをもって食卓についた。
健司とグリンガムOOたちもすでに食事の準備はすんでいるようだ。
こういうときの彼らの素早さは、並大抵ではない。
「じゃあ、食べよっか」
「いっただきまーす」
「がう」
がつがつむしゃむしゃぱくぱく…
見ていて気持ちいいくらいの食べっぷりである。
つばさにもミルクをあげながら、あやのはその様子を嬉しく思って見守っていた。
家族そろって元気にご飯が食べられるこの幸せはなにものにも変えがたいと思う。
「おかわり!!」
「がう!」
こうして、あやのが用意した大量のハンバーグがなくなるのに長い時間はかからなかったのである。
「あーうまかった」
「あはは。それはよかった」
食べた後の食器洗いをしながら、あやのは健司に微笑みかけた。
「健司くん、つばさそろそろおねむの時間だから、お願いしてもいい?」
「おう、まかせろ!」
なぜか自信満々でつばさを抱っこしてあやしはじめる健司。
そもそも泣いたりぐずったりはしてないからあやす必要はないのだが、親子のコミュニケーションの一環なのだろう。
その手つきに、不慣れさゆえの不器用ぶりと愛情が溢れていてあやのはくすりと笑みをこぼした。
「グリンガム、クール=ミント。健司くんがつばさをちゃんと寝かしつけるのを手伝ってあげてね」
いわれてとことこ歩き出す二匹を見送って、あやのは後片付けを再開した。
食べる量が増えるということは、洗うべき食器の数も増えるということで、ちょっと時間のかかる作業なのである。
それでも、あとも残さず綺麗に食べてもらえれば、それはそれで料理人冥利につきるというもので。
あやのは鼻歌まじりに食器洗いをすすめたのだった。
「健司くん、つばさは……」
寝室にそっと声をかけながら扉を開けたあやのは、あっ、と慌てて口に手を当てた。
ぴくり、と伏せていたグリンガムが反応して身を起こす。
それにしー、と指を立てながらあやのはすっかり寝入っている二人を見下ろした。
「疲れてたんだね」
くすくすと笑いながら二人の側に腰を下ろす。
健司とつばさは、仲良く頬を寄せ合うようにして寝息を立てていた。
「今日は皆でいっしょにここで寝ようか」
「がうがう」
「じゃあ、かけるものとってくるね」
ぱたぱたと足音が走り去る。
また再び音がして、部屋の明かりが静かに消えた。
しんと静まり返った家に聞こえるのは、平和な寝息がちょうど5つ――
* * *
というわけで書いてみました。
チェックのほうお願いします。
お風呂入れてる場面をいれようか悩んだのですが、長くなりすぎそうだったのでカットしました…