摂政クローズアップ計画発動! や、いらんかったら使わないでいいですが。
**摂政よっきーの憂鬱。
鯉のぼりがはためく王城の前で、一人の男の子がお菓子をもらう子供たちの行列を眺めていた。
「ぼく、まだお菓子もらってないんじゃないの?」 係員の男が、西国人の民族衣装に身を包んだ少年・・・というにもまだ幼い、眼鏡の男の子に声をかけた。
「ぼく・・・?まあいいか、自分は配る側だからいらないよ、子供じゃないし」 いぶかしげに振り返ったのはよっきー。 体は子供、中身は大人の敏腕摂政である。
しかし、その素性を知らない者が見れば、まさにお菓子をもらいに来た子供がはぐれたように見える。 係員は「素性を知らない者」に相当したらしく、その職務に忠実に、子供を保護しようとしたらしい。 いきなり「おうちの人は?」なんて聞くと、もし一人で来ていた時に悲しい思いをさせてしまうかもしれないからと、お菓子の話から切り出したというわけだ。
「ともかく、お仕事お疲れ様。おかげで子供たちの心からの笑顔をたくさん見られたよ」
そう言われて、当然のことながら係員は戸惑った。 よっきーの大人びた発言に、その子が今までどんな苦労をしてきたのだろうと想像までめぐらせた、その時。 男性の二人組みが近づいてきた。
(確かあれは政庁の・・・。) 「NEKOBITOくんにliangさん、いいところに・・・」 子供の言葉に、政庁の方の知り合いならこの子の保護をお願いしようと係員は胸をなでおろした。 この子は迷子にはならずに済んだのだと、顔をほころばせたのもつかの間。
「摂政サーマ、こんなところにいたんですか」 「完熟いよかんの差し入れがあったんですよ、ちょっと休憩してたべませんか?」
(せ、せっしょーさま!?見目麗しい少年のようだと聞いていたけれど、まさか・・・この子が!?) 係員はあわてふためき、体が二つ折りになる勢いで頭を下げる。
「す、すみません、摂政様にとんでもない失礼を!!」 「いいよもう慣れてるから。頭あげて。それより、あなたも休憩するといい」 じゃあいこうか、と、マントを翻して颯爽と休憩所に向かっていくよっきー。
「私が交代しましょう。いよかん、残しておいてくださいねNEKOBITOさん」 と、名乗りを挙げたのはliang。
「えええっ、そんな、とんでもないです!」 「あなたもお疲れでしょう?私はさっき休憩をいれましたから、さぁ」 「いいからいいから、いきましょう」 NEKOBITOが背中を押して係員を連れて行く。 代わって、liangがてきぱきと列の整理を行い始めた。
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一部始終を見ていた人々から噂は流れ、摂政よっきーは一躍子供たちのヒーロー、お母様方のアイドルとなったのである。
ごっこ遊びでは、今まで一番人気だった「藩王」にせまる勢いで「摂政」になりたがる子供が多くなった。 「藩王と違って摂政は何人いてもいいんだぞ」と、摂政だらけのごっこ遊びをすることもあったらしい。 当分は、男の子がなりたい職業ランキングに「摂政」がランクインすることだろう。
その話を聞いたよっきーは、 「どうして僕の人気が出るんだ。さっぱりわからん」 と、憂鬱な表情を浮かべるのであった。
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