涼州藩国 掲示板
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  [No.1193] 夜戦SS(途中) 投稿者:よっきー  投稿日:2014/02/10(Mon) 23:40:45

NEKOBITO氏のイラストに合わせてストーリーつけてみてます。
今のところ各段落に 重装甲・コンテナ投下・オペとつける予定で、
このあと疾走とI=D戦、という流れにするつもりです。

強襲作戦

ここは涼州藩国中央部にそびえる、涼州山脈の奥地。
この国では珍しい、鬱蒼とした針葉樹林に覆われたこの地に、ズシン……ズシン……と地響きが鳴り渡る。
闇夜に光るそのカメラアイで周囲を油断なく哨戒しているのは、そう。二機のI=Dだ。
人の背丈をはるかに超えたその巨躯は金属に覆われ、手にはその大きさに見合う機関砲を携えている。

その姿をウォードレスの赤外線カメラで確認しながら、チュマはひっそりとため息をついた。
無理もない。いくら彼の肉体が戦闘用に特化した改造歩兵のそれであるとは言え、
その肉体が改造歩兵専用ウォードレス&ruby(ビャクロウ){『白狼』};の、それも重装甲改修型であるとは言え、
彼我の体格差から来る本能的な恐怖というものは本来抑えることができない類のものだ。
(だが、今の俺はただのチュマじゃなくてアイアン1だからな……やるべきはやらにゃあなるまいよ)
アイアン1。それは彼がアイアン小隊の小隊長であることを示すコードネームだ。
彼の名前が「鉄」を意味する言葉だと知った仲間がつけてくれた、部隊のコードネーム。
それが仲間からの彼への信頼の証であると知っているから、彼は恐怖に沈みかける己を奮い立たせる。
(俺は俺の全力を尽くす。だからよ、お前も頼むぜ親友……オレーグよぉ)
チュマは祈るように空を見上げると、ハンドサインで部隊を散開させ、気付かれないよう包囲陣形を組み立てて行く。
「さあ、ド派手にブチかますとしようか!」
誰のものともしれない咆哮と、三連装電磁レールキャノンの放つ超音速の衝撃波が夜戦の始まりを告げた。

一方その頃。チュマの見上げたその空では。
涼州藩国の誇るステルス輸送機『白篭号』が今まさにその格納庫から二つのコンテナを投下したところであった。
そのうち「2」とマーキングされたコンテナの中、自由落下によって生じた浮遊感に眉をしかめつつ、
オレーグはファルコン分隊の二人のチームメイトと共に再度自分の装備を確認する。
『白狼』降下仕様。それはチュマの重装甲改修型などとは違い、『白狼』としてはほぼ標準仕様と言ってもいい装備だ。
だが、一つのコンテナにスリーマンセルを搭載する前提から、かさ張る重火器は使用できない。
(まあ重火器が無いと言っても、無線を傍受する限りではI=D部隊はチュマの隊がうまく引きつけてくれているようだね……)
オレーグの所属する分隊は、1番コンテナのイーグル分隊とともにひっそりと降下を行い、
アイアン小隊がI=Dに対して陽動を仕掛けている間に、敵拠点を急襲・制圧するというのが作戦プラン上での役割である。
だから対人戦では火力過剰となるような重火器は本来不要なのだが、オレーグの胸には言い知れぬ不安があった。
その事を出撃前に話すと小隊長のレイチェルなどは「だからお前はいつまでもナンバー3なのさ」などと茶化していたのだが、
続く次の無線傍受で彼らはオレーグの不安が的中したことを知った。

戦端を開いて暫くの間、火力や装甲で優るI=Dを相手にアイアン小隊は善く戦っていた。
後方に控えた指揮車からのオペレートを受け、樹木に姿を隠しての連携戦闘で敵を翻弄する戦術はさながら狼の狩りのようであった。
だが、勝利を確信していたアイアン小隊の動きを、上空に響いた風切り音が、そしてそれに続いた爆発音が封じたのだ。
幸い直撃はなく、破片による負傷者などもなかったが、思わぬ伏兵の存在に隊の統率が一瞬乱れる。
「遠距離砲撃です!次弾も続いて来ます!着弾予測地点から退避を!」
機関砲ならば防盾の併用などで耐えることができる重装甲型とはいえ、長距離砲の直撃を受ければただでは済まない。
オペレーターの指示に従い部隊を大きく動かすことで直撃の被害は避けられるものの、
眼前のI=Dに対するフォーメーションが崩れたことで今まで培ってきた優位は全て失われてしまった。
更には砲撃の余波により、今まで盾としてきた樹木が倒れ、移動を阻害する障害物となってしまう。
(向こうさんのほうもド派手にブチかましてくれやがる……陽動としては成功しているんだがこりゃちとタフだな)
心中で舌を打ちながらも、チュマは戦況を打開すべく素早く判断を下し、部下に指示を出した。
「向こうで砲撃してる奴を叩きに行くぞ!指揮車が弾道逆算して発射地点を特定し次第全力ダッシュだ!
 どうせ相手の戦力はそう多くないはず、俺ともう一人……アイアン4で行く。いいな!」
部下たちの&ruby(ラジャー){了解!};という声を受けたチュマがふと見上げた空には雲が垂れ込め、月さえも見えなかった。


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