昨今激増している船外作業士という存在と切っても切れない関係にあるのが、船外作業を行う際に着用する宇宙服である。
通常宇宙服と言うとぶかぶかの外骨格状(ハードシェル型)のものを想起される方も多いであろうが、
その方式では手指なども非常に太い形状となってしまい、船外作業に求められる手先の繊細な動きが損なわれてしまう。
そこで今回涼州藩国が採用したのがスキンタイト型と呼ばれる方式の宇宙服である。
これはハードシェル型が宇宙服の中に気体を満たすことで人間の生存に必要な圧力を確保しているのに対し、
肌に密着した服の収縮する力によって圧力を確保する方式である。
この方式の利点は主に二つあり、一つはスキンタイトと言う名の通り肌に密着しているため手の動きを損なわないこと。
もう一つはハードシェル型に比べて強い圧をかけることができるため、船外作業前のプリブリーズの手間を省けることである。
ただ、スキンタイト型は気密が保たれているとはいえ、宇宙線やデブリへの防御力は低い。
そのため、基本となるスーツの上に耐宇宙線・デブリ用の装甲パーツを着用する二重構造になっており、
これは先日涼州藩国でロールアウトした改造歩兵用WD「白狼」の設計思想に近いと言われている。
白狼の開発と前後して船外作業士の育成が急激に活発になったことも含めて考えると、
これ以外にも白狼から多くの技術的フィードバックがあったことには疑いの余地がないと言えるだろう。
反面、オーバースペック化によるコスト高などを懸念する声も聞かれるが、
次世代、あるいはさらにその次の世代にも通用しうる高機能装備を開発することによって
涼州藩国が本腰を入れて宇宙開発に乗り出そうとしているというアピールの意図もあるのではないか
というのが筆者の考えである。
(SpaceTimes特集記事 ”宇宙開発の今を斬る!”より抜粋)