ざららっと考えたエンジンの設定文になります。
エンジン以外の性能にも言及してるところがありますが……
おかしいところとか他に都合悪いところとかあったら指摘してください。
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機体名の開発は、もともと白夜号のフレームを流用して低コストに行われる予定であった。
しかし、軍用の飛行場を一度飛び出して爆撃を終了させ帰還するまで着陸する必要のない爆撃機と違い、
輸送機というものは滑走路の短い民間の飛行場や、場合によっては道路にも降り立つ必要があった。
人員や物資を届けるだけならば空中からの投下が行えればそれで問題はないのだが、
投下は出来ても積み込めないというのでは輸送機として致命的な欠陥であるというのは明白だった。
当初はエンジンの改良によってこの欠点を補うことが試みられた。
新型のターボファンエンジンを採用し、バイパス比を上げて低速時の出力を向上させたのだ。
たしかにこれで離陸距離は短縮され、それなりの民間飛行場であれば充分離着陸が可能となった。
だが、単なる輸送機ではなくステルス輸送機である機体名に求められる性能はこの程度では足りなかった。
ステルス輸送機は単に飛行中敵のレーダーに見つからなければよい、というものではない。
いくらレーダーに捕まらないからといって1km以上もの滑走路を必要とするようであれば、
おのずと離着陸できるような場所は数が限られてくる。
そこを待ち伏せされてしまえばステルスに防御性能を頼った機体名などはイチコロだ。
だからこそ短距離離着陸性能には最大限の努力を惜しむわけにはいかなかった。
(摂政などは最後までVTOLにすべきだと強硬に主張していたがこれは開発主任権限で却下された。
下方に排気口の存在するVTOLは対地ステルス性能を激しく劣化させてしまうためだ)
そこで、当初の予定であったフレーム流用は諦めて一から設計をやり直すこととなった。
電磁波の反射角度を計算しつくしたそのフォルムこそ白夜号と類似しているものの、機体は一回り小型となっている。
小型化によって機体重量の軽減、すなわち離陸距離の短縮を狙ったのだ。
だが機体の小型化はそのままペイロードの縮小をも意味する。
たしかに短距離離陸は重要だが輸送機として最も重要な輸送量を減らすわけにはいかない。
機体構造材の軽量化、空力特性の改良……どれも決定打にはならず開発スタッフは皆頭を抱えた。
そこに一条の光が射した。
ちょうど同時期に開発の行われていた新型の太陽電池が完成したのだ。
予想を超える性能をたたき出したこの太陽電池は藩国の思想を一新した。
もちろん機体名にもその影響が及んだことは言うまでも無く、
その結果開発されたのが電気モーターとターボジェットのハイブリッドエンジンであった。
従来ジェットエンジンの出力そのものを利用して回転させていたコンプレッサーのファンを
機体上面に配した太陽電池(そしてそれに接続されたキャパシタ)からの電力によって回転させることにより、
エンジン始動時のトルク向上・ファン回転数の動的最適化・構造の単純化を実現した。
結果としてエンジン単体としての性能向上が行われただけではなく、
起動時出力の向上による離陸距離の短縮やメンテナンス性の向上、
燃料タンク小型化によるペイロードの増加など輸送機としての大幅な機能向上が見られた。
特に燃費に関しての強化は眼を見張るものがあり、
燃料タンクはキャパシタを含めてもともとの半分程度のサイズで既存機体の航続距離に届き、
日中フル充電状態であればジェット燃料なしでも電力のみで2-3時間程度の短距離フライトが可能となった。
電力のみによる飛行は低騒音性・低公害性にも優れていたため、
住宅地や農地が近くにある場所での離着陸にはこちらを使用するようにもなったし、
ジェット燃料の燃焼による廃熱が無いことは熱ステルス性の向上となり
赤外線追尾ミサイルの回避や赤外線による監視システムへの対策ともなっていた。
これらだけをみるといい事ずくめにも見えるのだが、
一方で電力枯渇時の再充電には燃料の充填に比べて多くの時間がかかることや、
日中と夜間のフライトで性能に大きな差が出ることなどの問題点も残されていた。
ただ、それを補って余りあるほどの恩恵がこのハイブリッドエンジンにはあったのだ。
今日も機体名は太陽の力を借りてニューワールドの空に舞うのである。