悪童同盟 掲示板
[新規順タイトル表示] [ツリー表示] [新着順記事] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [管理用] [RSS]

  [No.1182] 少女の夢 整備士(SS) 投稿者:ゆうみ  投稿日:2008/07/07(Mon) 23:39:29

どっかのアニメみたいなタイトルといわれても仕方なし・・・。


/*/

わたしも名整備士に、整備の神様になって・・・藩王様のスバル360を整備するんだ!
そんな夢を胸に抱き、少女はアイドレス工場に向かった。

(女で、しかもわたし子供っぽいから、入れてももらえないんじゃないかしら?)

それなら、男になればいい。
短絡的な考え方ではあったが、何事もトライ&エラーだと、ちょっとした変装をしてみる事にした。

幸い、健康的に日焼けした肌に、細身の体。
体のラインが出にくい服を着て、ターバンの中へ髪を隠せば少年に見える。

(砂で顔を汚しておこう。ちょっとでも男の子に見えるかな?)

鏡を見て、よし、これならと胸を張り、アイドレス工場へと向かった。

そこでは男たちが何やら搬入を行っていた。
「子供がウロチョロすんな!あぶねぇぞ!」
「わ、わた・・・俺だって整備士になるんだ!若いからいっぱい働けるぞ!」
「そんな細っこい体でか?」
「あ、ああ。大丈夫さ!」
「じゃあそこの荷物、向こうの置き場まで持っていってみな!それができたら教えてやるよ!」
「わかった!」
バカにした言い方じゃない。自分は試されているのだ。

中には部品らしきものが入っていた。持ってみると、ふらつきそうなくらいの重さだ。
30kgはあるだろうか。

(この箱を落としたら、中の部品が壊れちゃう・・・!)

大人達は大きな手で箱の持ち手を握り、軽々と運んでいく。
しかし自分は同じ持ち方では向こうまでたどり着く事は到底できなさそうだ。
少女はどうやって持てば安定するか、必死で考えた。

(そうだっ!)

視線の先には、積んだ箱がずり落ちないようにゆわえていたロープが落ちていた。
それを拾って、持ち手の穴に通し、背中を通ってもう一方の持ち手にくくり付け、体全体を使って箱を持ち上げた。
箱の下辺が腰の位置で止まっているので、バランスは崩れない。
あとは足さえ動けば・・・!

少女の体重とさして変わらない重さの箱。いわば彼女の足は、彼女二人分を支えているに等しい。
サンダルが砂地に食い込んで、足が痛くなるが、一歩一歩前へと進んだ。
指定された置き場へたどり着いた頃には、もういっぱいいっぱいだった。

(でも、これをきちんと置くまでが仕事なんだから!)

最後の力を振り絞って、そっと箱を下ろす。
肩にかけていた紐から体を抜いたら、気まで抜けてその場にへなへなと座り込んでしまった。

「おじょうちゃん、よくやったな!」
周囲の作業者全員が拍手を贈る。
「お、俺は男だって!」
「隠さなくたって大丈夫さ、女の整備士がいて悪いわけがない」
「そうそう、もしそんな事でいちゃもんつけるヤツがいたら、あの人にしばかれるって!」
「だよなぁ。」

(あの人って?)

首をかしげた少女を見て、大人たちが説明を始める。
「俺達よりずっと腕もあるし、細かい作業から、すっげぇ溶接までこなしちまう、整備の神様がいるんだよ」
「そう、その人が女性でな」
「細身の体なのに、思い荷物もひょいひょい持っちまうのよ」
「こんなガタイしてる俺達と違って、狭い所にも入っていけるだろ?それがまたすごいんだわ」
「そんなすごい人がいるんですか!」
少女の目が大きく開く。
「ああ。それを知ってるから、俺達は女だ男だ、見た目がどうだってこたぁ気にしないのさ」
不器用なウインクつきで、スキンヘッドの男が言った。

「おじょうちゃんは、中身を壊さないようにしただろう?」
「だって、大事な部品なんでしょう?」
「そうさ、大事な大事な部品さ」
「それを忘れなければ、きっと立派な整備士になれるよ」
「ほんと!?わたし、整備士になれるの!?」
うれしい!という声とともに疲れが飛んで行った様で、少女はぴょんと跳ね起きた。

一人が肩の整備部隊章を指差して言った。
「これをもらうまでには辛い修行が待ってるが、おじょうちゃんならきっと大丈夫さ」
工場から、紙を持った男が出てきた。
「これが募集要項だ。おじょうちゃん、がんばって立派な整備士になれよ!」
「はい!」
少女の笑顔は悪童同盟の空よりも明るく輝いていた。


- 関連一覧ツリー (★ をクリックするとツリー全体を一括表示します)

- 返信フォーム (この記事に返信する場合は下記フォームから投稿して下さい)
おなまえ ※必須
文字色
Eメール
タイトル sage
URL
メッセージ   手動改行 強制改行 図表モード
メッセージには上記と同じURLを書き込まないで下さい
画像File  (5.2MBまで)
暗証キー (英数字で8文字以内)
プレビュー   

- 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
処理 記事No 暗証キー