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旧ヲチ藩国陸軍のエリート部隊、擲弾歩兵部隊に属する、限定的ながら工兵技能を保有する歩兵で、新藩国軍でも現役で活躍している。
因みに、擲弾歩兵部隊とは、通常の歩兵と差別化するために付けられた呼称である。
この隊は後述する、シーズン1に発動された陸軍再編計画による新設部隊の第一号で、当時の特務連隊に新設された部隊であり、通称「リュパン中隊」と呼ばれている。
また、同計画では、工兵教育専門の工兵教練学校（ヲチ藩独特の雪害対策を施された構造を持つ建物で、有名な新人技族のデザインの為、地元の名物となっている）が新設され、新たな部隊・兵員の教育・練成が既に行われており、リュパン隊は初めての同校出身部隊でもある。
この歩兵部隊の特徴は、専門の戦闘工兵や施設工兵には及ばないものの、塹壕を利用した簡易的な陣地構築と爆薬による施設破壊等の技術を習得しており、かつ歩兵としての交戦能力も併せ持つ一種の特殊部隊で、専門の工兵隊の支援を受けずに単独で陣地を構築する能力を持つ他、敵と交戦中に塹壕を掘ったり、敵陣地を爆薬で爆破するなどして無力化するなど、戦闘工兵に近い運用を目指している。
このユニークな部隊の誕生には当時のヲチ藩国がおかれていた状況が大きく影響している。
兵器生産能力に乏しく、軍の近代化に遅れをとり、他の藩国と比べ戦車やI=D等重装備の保有・稼動数に大きく劣っていたヲチ藩国陸軍は、比較的軽装備の歩兵部隊を主力としていた。
そして、重装備中心の他藩の部隊に比べ、歩兵中心のヲチ藩国は、軍部隊の打撃力・防御力に大きな不足を抱えていたのである。
この状況を打開する為、当時のヲチ藩国軍上層部は陸軍再編計画を実施、防御陣地の構築や最新装備の導入を進める一方で、工兵部隊で歩兵部隊を支援する事により兵員の損耗を抑え、敵陣地への突破能力を向上させる案を採用した。
その為、戦闘工兵隊の増員・再編成を行う事になったが、資金・兵力・時間の不足を鑑み、一部の歩兵部隊に簡易的な工兵の機能を付与する事で工兵の不足に対処する事になり、その為、擲弾歩兵部隊の編成が行われる事になったのである。
擲弾歩兵部隊の隊員は、特務連隊所属部隊や工兵隊・歩兵隊からの志願者より適性試験に合格した者を中心に、新兵の中から選抜された者を加えて構成されており、中心である特務連隊の主体が犬士で構成されていることからある事からこの部隊も犬士出身者で構成されている。
また、当然ながら塹壕堀などの工兵としての任務に耐えうる体力の持ち主が選ばれている。
この部隊の配属となった兵士達は、工兵と歩兵両方の技術を習得する為、特別な訓練プログラムを受けることになっていた。
発足当初は、ただえさえ厳しい訓練を受けている通常の歩兵部隊に対し、さらに限定的といえ専門性の強い工兵の教育を施すことで、中途半端な部隊になり、実戦で使いものにならないのではないかと危惧する向きもあったが、職人気質の強い国民性からか隊員たちは工兵の技術を喜んで学び、想定通りの精鋭部隊となった。
今後は同様の訓練により、幾つかの歩兵部隊に同じく工兵の機能を付与する計画になっている。
ちなみに、当時のヲチ藩国は、各歩兵部隊の中に戦闘・施設工兵隊を編成することを目標としていたが、先に挙げた理由により実現には時間が必要とみなされていた。
また、先日の「全員水泳大会事件」の教訓から、大部隊の移動をスムーズに行えるよう、移動を支援する施設工兵隊の増員・再編成も戦闘工兵隊に合わせて進められた。
その後、数を増強した擲弾歩兵部隊は、ヲチ藩国陸軍の中心部隊として、激動のシーズン1で藩国を支え続けたのである。
旧ヲチ藩工兵隊には、冬季工兵隊合同演習という、工兵隊の名物とされる伝統の訓練があった。
訓練内容は、年に1度、高山地帯である過酷な冬の環境下で、一月程度の演習を行い、雪深い自然の中での戦闘訓練を積むというもの。
一隔年ごとに行われる訓練で、一個連隊ほど規模で行われる。
始めの一週間目から2週間目までは、遮蔽物の無い、だだっ広い見渡す限りの雪原で、雪を利用した掩蔽物の作成やカムフラージュ、陣地構築などの訓練を行う。
そして、3週間目には山岳地域のふもとに広がる針葉樹林でトラップや地雷の設置・排除、自然物を利用した陣地構築や、行軍支援訓練などを重視した訓練を行う。
そして最後の4週間目に行われるのが、この一連の訓練でもっとも過酷な、南部高山地域での演習である。
冬季演習の総仕上げとして実戦形式で行われる雪山での演習は、過酷な冬の高山地帯の訓練である為、細心注意を払って演習に臨んではいるが、稀に遭難者が出るケースもある。
しかし、それでもこの訓練を廃止しようとする動きは無かった。
これは、雪国であるヲチ藩を守るためには、雪山及び雪原での訓練が必要不可欠とみなされており、工兵隊の機能維持や向上の為には必要であると判断されている為である。
また、代々ヲチの兵士達は雪山での戦いに優れていたとされており、この訓練を乗り越えることは、自らもその伝統に加わることを意味し、ヲチ工兵の誇りともなっていた。
この演習に参加したことの証明である、雪に耐えるみかんの木をあしらった徽章を軍服につけて初めて、一人前のヲチ軍人と認められるとされていた。
