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  [No.1256] 取得アイドレス『善き神々の復活』 投稿者:ゆうみ@護民官事務所  投稿日:2008/11/25(Tue) 13:15:50

取得アイドレス『善き神々の復活』の作業というか結果はこちらへー。


  [No.1257] イラストはこちら 投稿者:ゆうみ@護民官事務所  投稿日:2008/11/25(Tue) 13:16:09

イラストはこのツリーへ。


  [No.1258] 地図1 投稿者:ゆうみ@護民官事務所  投稿日:2008/11/25(Tue) 13:17:05
地図1 (画像サイズ: 524×677 51kB)

スタート時点の地図です。
オアシスの周りに防砂林、防砂壁が作られたところ。


  [No.1259] 地図2 投稿者:ゆうみ@護民官事務所  投稿日:2008/11/25(Tue) 13:18:15
地図2 (画像サイズ: 522×684 78kB)

まずは囲ったところを開拓成功したところまで。
オアシスも増えたよ。


  [No.1260] 地図3 投稿者:ゆうみ@護民官事務所  投稿日:2008/11/25(Tue) 13:18:48
地図3 (画像サイズ: 515×665 95kB)

その後さらに緑が広がったよー!!


  [No.1265] 設定文ここにおきます。 投稿者:ゆうみ@護民官事務所  投稿日:2008/11/25(Tue) 13:27:04


砂漠地帯がその大地の殆どを占める西国の地には、食料生産地がなかった。
元々が新興国であったから、食料生産令によって食糧生産地が作られることもなく、食料は燃料を売った資金を使って、藩国外から買い付けてまかなっていた。

しかし、国民が一気に増えた事により、食料事情に不安の影が差した。
当面はNACから大量に買い付けた食料でまかなえるが、その先は・・・。
国民の生活を護る為、万が一食料が輸入できなくなった時に備るべきである、という話がすぐに持ち上がった。

政庁から出た提案は、食料プラントを作り、そこで効率の良い栽培方法を取るという方針であったが、国民は緑化運動によって大地に緑と実りをもたらす事を望んだ。
奥方が緑化運動に熱心であったからか、藩王も二つ返事で国民の要望通りに計画を書き換えた。

国民が増えたことで帝國から新しく与えられた土地を、開拓専用とした。
これは工場群が広がる地域に穀倉地帯を作るのはあまり得策ではないと考えた、緑化運動のリーダー的な国民からの提案だった。
また、開拓事業をきかっけにこの藩国に根付く事を希望した国民からの要望とも一致した。
藩国の首脳陣にもここなら多少植生を変えても影響が少ないのではないかと判断され、翌週にはオアシスを中心とした穀倉地帯の開拓が正式に開始された。

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開拓は、まず、オアシスの周りをぐるっと防砂林で囲う事から始まった。
それなりに広い開拓地を囲うには、塩害に強い品種の樹木を植樹するだけではとても補いきれなかったから、足りないところは防砂壁を使用することにした。
これも当面の話で、少しずつ防砂壁を樹木へと置き換えていく計画が立てられていた。


砂漠は、当然の事ながら、そのままでは農地として使えない。
そこで他国から腐葉土を買い付ける案が持ち上がった。
砂漠の砂はミネラルが多く、エステや砂風呂などに適している。
それを売って腐葉土の購入資金とする計画が立てられた。

この時、開拓事業参加者の中で一つの声があがった。
「この西国の砂を、土を使って農業をやってやろうじゃないか!」
土を全て入れ替えてしまえば開拓は簡単になるが、それはここが西国でなくなる事を意味すると、彼らは熱く語った。
この件は議会でも取り上げられ、藩国をあげての支援が始まった。

開拓計画に多少の遅れは生じるが、耐塩性をもつアツケシソウなどの植物を植え少しずつではあるが緑を増やしていく事で、全体としての進捗の遅れを最小限に留める案が出された。
その間に、西国の砂や土を少しでも農地に向いたものにする方法を、科学者達は皆で考えた。
機械の製造も急ピッチで進められた。

そうやって砂や土から丁寧に取り除いた取り除いた塩分を「砂漠塩」という名で大々的に売り出し、その資金を開拓事業の資本に費やした。
またたく間に「砂漠塩」はバザールにやってきた観光客が必ず購入するほどの名産品となった。

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開拓事業に従事する国民達の心の支えとなったのは、オアシスの近くに植えられた、1本の松の木。
そして、その近くに作られた小さな社。
彼らは一日のはじまりと終わりに、豊穣を願い社に祈りを捧げた。
宗教など関係なく、1本の松の木と1つの小さな社は、彼らの願いのシンボル的な役割をしていた。


当番を決めたわけでもないのに朝には誰かが供物を捧げられており、休憩時間にみんなでおさがりをいただく。
それが彼らの心に結束と癒しをもたらしていた。

国民達の祈りが届いたのか、ある日の夜明け前、松の木から鈴の音が聞こえたかと思うと、社の扉から鈴を持った小さな少女のような神と、二本足で歩く猫の神、ぬいぐるみのように見える犬の神が現れた。
それとともに防砂林がまるで神社の杜であるかのようにふくれあがり、一斉に生い茂った。そして、一帯は澄み切った空気に包まれた。
神々は人知れず豊穣の祈りを捧げ、少女のような神は土地に、猫の神と犬の神は植物に、わずかばかりの生命力を与えた。
神々が社に戻ると、防砂林は元の姿に戻っていった。

国民達は毎日汗水たらして作業を行い。
神々は週に1度くらい、気まぐれのように思える頻度で大地を潤し。
そして、曲がりなりにも穀倉地帯と言える環境ができあがった。

国民達は実りの大地に感謝し、土地を枯れさせないようにする為、穀物−牧草−飼料の輪作を行う事とした。
目の前の収穫量よりも、よりよい未来を選択したのである。

/*/

初めての収穫祭は国をあげて行われた。
収穫祭は開拓事業には参加していなかったものの事業成功に感謝する多くの国民も集まって、盛大なものとなった。

開拓事業の成功を信じて待っていた藩王と摂政は、それぞれに苗や若木を用意して参加した。
お互いにその事を内緒にしていた二人が顔を見合わせたのは言うまでもない。

集まった皆が協力してそれらを植えていった結果、オアシスの緑は以前にも増して美しく輝いた。

翌朝、昇りかけの朝日に輝くオアシスを見、「我らの手で作らずとも杜があるではないか」と神々は評した。
いつものように豊穣の祈りを捧げると、杜は一層神々しくふくれあがり、何もせずとも奇跡が起きるのではないかと思わんばかりになった。
人々の努力と感謝を忘れない心をよしとした神々は、最後の仕上げとして地下水脈を湧出させ、これからも彼らを見守っていく事に決めた。

/*/

善き神々は、その力をもってすれば短期間で砂漠を実りの大地に変える事ができた。
しかし、それを行えば人々の努力を否定することにもなりかねないと理解していたから、最低限の助力だけに留めることにした。
その結果、時間はかかったものの、人々は実りの大地だけでなく、達成感と自信と感謝と、温かな心を得ることができたのである。

その後も開拓は進み、階層1つ分が大きな農地となった今も、国民達はいつも誰かに見守られているように暖かい何かを感じている。
もしそこに猫の神様や整備の神様がいたならば、善き神々が人々をそっと見守っていることに気づくだろう。


  [No.1266] SSこれでーす。 投稿者:ゆうみ@護民官事務所  投稿日:2008/11/25(Tue) 13:27:46

「奥方さまー、あんまりがんばりすぎたらあきませんよー?」
夕焼けに赤く染まる頃。
芽生えたばかりの双葉の成長をひざをついて祈っていた奥方に少女が声をかける。
「毎日来れるというわけではないから、すこしでも長くいたくて」
奥方に手を伸ばした少女は、その美しい微笑みを見て赤くなった。
「あっ、ごめんなさい、うち、手、汚れたままで・・・」
「ふふふ、私のても土だらけよ。お互い様」
少女の手を取って立ち上がった奥方は、少女の顔を見て、それはそれは嬉しそうな表情になった。

「貴女、今日は泣いていないのね。よかったわ」
「へっ!?」
「広場で緑化運動をした時、貴女、涙を流していたでしょう?私、覚えているわ」
「あっ・・・」
環境の変化のせいか、実際過ぎた時間よりもずっと昔に感じられた[[難民キャンプ>T11難民受け入れキャンプ]]の頃。
あの時の姿を奥方様に見られていたのかと恥ずかしくなり、少女はうつむいた。
「ごめんなさい、今こうやって笑顔の貴女と手を繋げているのが嬉しくて」
え?と奥方を見ると、少女の手がぎゅっと握られ。
「お社まで走るわよ!」
まって、とも、あ、とも、発する暇を与えられず、少女はオアシスのほとりにある小さなお社へと引っ張っていかれた。

オアシスのほとりには松の木が植えられており、その近くには大工仕事の得意な者が片手間に作った小さなお社が建てられていた。
皆信じるものは違うが、豊穣を願う思いは同じであり、いつしかそこは人々の憩いの場ともなっていた。
作業をする前、帰る前には誰に言われるともなく必ず祈りを捧げ、実りを願う。
毎日のように誰かが供物を捧げ、休憩時間にはみんなでおさがりをいただく。
それが彼らの日課となっていた。

(おいしいごはんができますように。ごはんの次にはお花をそだてられますように)
未来の花屋を夢見る少女がいつもと同じ願いを込めて祈り終えると、奥方も顔をあげたところだった。
二人はとびきりの笑顔になると、挨拶をしてそれぞれの家へと帰っていった。


/*/

ある日の夜明け、松の木から鈴の音が聞こえたかと思うと、どこか絵本の挿絵を思わせるほのぼのとした雰囲気をかもしだした観音開きの扉が。ぽんっ、という、微笑みを誘うようなかわいらしい音とともに開いた。

「どっこら〜しょ」

そこからは巫女装束にも見える、西国では珍しい着物を着た女の子――というには等身がおかしかったが――が、年寄りのような言葉を発して飛び出てきた。

「すながくちにはいった!?」

今度は丸々とした猫――だが二本足で歩いている――が現れ、人の言葉で文句を言った。

「ふぉふぉ、風のいたずらを感じられるのじゃ。嬉しいことではないか」

今度は犬――の形をしてはいるが、ぬいぐるみのようにしか見えない――が現れ、これまた人の言葉で猫を諭した。

「さて〜ぇ、人に見られる前に終わらせてしまわんとの〜ぉ」
おもむろに女の子が懐から鈴を出してリズムを取る。
人の可聴域からは外れているがが、空気を震わすその鈴の音は温かみを帯びていた。
その踊りに加わるように、二本足の猫とぬいぐるみのような犬が踊りだす。

「ほぉ〜じょぉ〜〜〜の〜〜〜〜 ひかりの〜〜ぉ あ〜めを〜ぉ」
「「「ふらせ〜〜〜〜ぇ たてまつり〜〜〜て〜ぇ そぉ〜〜うろ〜〜〜ぉ」」」

1人と2匹と数えればよいのか・・・彼らは声を合わせて言の葉を音に乗せた。

鳴らす鈴から、黄金色の粉が舞い降りる。
雨というにはあまりにも軽く、雪のようにふわふわと舞い落ちていく。
神々がほんの少しだけ、枯れかけた土や植物に生命力を分け与えたのだった。

「今日はこんなもんかいの?」
「そうだね、あまりに強く働きかけるのもね」
「無理はよぉない、まったりとな」

今日の仕事はこれで終わりと、またお社へと戻っていく。

ぱたん、と扉が閉まると、景色が元の姿へと戻り。
そして、夜が明けた。

/*/

一方その頃。

眠っていた猫の神様がヒゲに何かを感じ取り、目を覚ました。
早起きな犬の神様が耳をそばだてて、何かを聞き取った。
徹夜明けの整備の神様は、使い慣れた道具たちが何かに共鳴しているような気がした。

毎日ではないのだが、たびたびそんな事が続いた。

/*/

「やったぞ!わずかだが実がなってる!!」
「本当だ!やったぁ!!!」
「俺達はやったんだ!!」
開拓事業が成功したのだという喜びに、皆が打ち震えた。

収穫に至るまでにはもう一山こえなければならないが、それでも、彼らは

(あれ?)
そこだけ何か違う色が見えるような気がして、少女が足を止めた。
近づくと、それは一輪のひまわりだった。

「お花が・・・!お花が咲いてる!!」

よくできた造花ではないかとおそるおそるひまわりに触れたが、その感触は本物としか思えなかった。
これは夢ではないかと思い切り頬をつねったが、痛かった。
夢ではないのだ。

少女は一目散にお社へと駆け出した。

(畑の近くにひまわりが咲きました。おおきに!おおきに!)

お社の前で何度も何度も感謝をして。嬉しくて嬉しくて、もう動けなくなって。
嬉し涙で顔がぐちゃぐちゃになった少女に、一枚のレェスのハンカチが差し出された。
「あらあら、今度は笑顔と涙と両方ね」
ハンカチでぬぐってもまだあふれ出る涙を止められないまま笑顔の奥方に抱きしめられて、少女はありとあらゆるものに感謝をした。
「貴女達ががんばってくれたからよ。ありがとう。本当にありがとう」
少女は何度も何度もうなづいて、奥方にすがりついた。

/*/

無事収穫の時となり。
開拓地で藩国をあげての収穫祭が行われた。

小さなお社の前にはたくさんのお供えが置かれた。
誰も口にはださないが、不思議な体験をした者は、誰かが陰で支えてくれたのだと感じていたから
お供えに感謝の気持ちをおもいきり込めていた。
その他の者も、未来へとつながる

藩王は、大きなトラックに苗木と若木を積んでやってきた。
「どういうことですか悪童さん。まさか抜け駆けを・・・?」
「いやまて、話し合おう」
と、そこへもう1台のトラックが到着した。
「摂政様、あのトラックの横につけといたらいいですかねぇ?」
窓から顔を出した運転手が言った何気ない言葉に、悪童屋はニヤリと笑った。
「よっきーも抜け駆け?」
「僕は家がないから、植える場所がなくて困っていただけですよ」
「ははっ、まぁいいか。祭りだ祭りだ!」

トラックにひっかけてあったアナクロな拡声器で、悪童屋が号令をかけた。
「この実りに感謝して、植樹祭もやるぞー!みんな、かかれー!!」
おー!という歓声とともに、集まった国民は我先にと苗や若木を植えだした。

ひとしきり落ち着くと、今度は開拓事業のリーダーが最初に鎌を入れた。
拍手の雨が降り注ぎ、今度は皆で刈入れを始めた。
出自は違えど結束は固い。それがこの藩国の長所の一つであった。

こうして無事収穫祭は終わり、人々は温かな心持ちのままにその日の眠りを迎えることとなった。

/*/

祭りの翌朝。
いつものように神々がお社から出てくると辺りを見回し、目を細めた。
お社の周りに緑があふれていたのだ。

「ほぉぉ、見事な杜ぢゃなぁ・・・」
「空気まで美味くなったみたいだね!」
「人間よ〜ぉ、よ〜ぉやったのぅ」

神々は水源を少しずつ移動させ、あと一歩で泉を湧かせられる、というところまでにしていた。
昔々に起こった水を求めての争い事を思い出し、最後の一手をためらっていたのだ。
しかし、人々の行いと、その結果としてふくれあがったオアシス――この土地においての杜――は神々の疑念を払拭した。

「水の奪い合いとか起こるといやだけど」
「彼らなら大丈夫じゃて」
「ふぉふぉ、行く末が楽しみですなぁ」

神々は顔を見合わせると、うん、とうなづいて満面の笑顔となった。

「さあ〜ぁて、これは〜ぁ、ごほ〜びぢゃぁ」

「ほぉ〜じょぉ〜〜〜の〜〜〜〜 ひかりの〜〜ぉ あ〜めを〜ぉ」
「「「ふらせ〜〜〜〜ぇ たてまつり〜〜〜て〜ぇ そぉ〜〜うろ〜〜〜ぉ」」」
「うつ〜くしぃ〜〜〜き〜〜〜〜 いずみよ〜〜ぉ わ〜きて〜ぇ」
「「「めぐみ〜〜〜〜ぃ たてまつり〜〜〜て〜ぇ そぉ〜〜うろ〜〜〜ぉ」」」

いつもより長い祝詞が終わると、地面からこぽこぽと水が湧き出てきた。
それが水溜りほどの大きさになるかならないかのうちに、いつものようにお社の中へと戻っていく。
扉の閉まる音が、いつもよりもうれしそうに感じられたのは気のせいではないようだ。
鈴の音がいつもより長く続いていたから、きっと。