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[[イグドラシル]]
*涼州猫 [#mbeac97a]
**概要 [#ieeb4903]
#ref(http://www.cano-lab.org/akudo/bbs3/data/1307802401.jpg,around)
涼州猫とは文字通り涼州藩国に棲み夜を守る、猫の神様とその眷族の総称である。
彼らは自らの国を自らの力で守るという意志のもと、猫の神様の下での修行の結果&ruby(ニャウォーク){二足歩行猫};形態へと変化する術を会得した。
そして術を会得した証として師匠である猫の神様からブレスレットを授与されることで一人前の涼州猫として認められるのである。
&ruby(ニャウォーク){二足歩行猫};形態となった涼州猫は総じて器用であり、頼みさえすれば機械整備なども人間と同じようにこなしてもらえる。
&ruby(ニャウォーク){二足歩行猫};形態となった涼州猫は総じて器用であり、頼みさえすれば機械整備なども人間と同じように((とはいえ猫としての飽きっぽい性格ゆえ、その能力は具体的に終わりの見える作業に限られる。言い換えれば技術開発などの「どこまでやれば終わりなのか分からない」ものについてはほぼ受けてもらえない))こなしてもらえる。
だが見返りとしてかつおぶしなどを求められることも多く、コスト的に見合うかどうかは怪しい。
まさに猫の手も借りたいときのみに採用される切り札であるとも言える。
余談ではあるが、&ruby(ニャウォーク){二足歩行猫};形態はあくまで猫が直立して歩行しているかのような猫の顔と体毛に覆われた体を持つ容姿で、
今の涼州猫たちがただの人間に猫耳猫尻尾を付けたような姿になることはほぼない。
これは涼州藩国の建国以前、悪童同盟の時代に猫の神様と悪童藩王の間で結ばれた約定によるものである。
当時の猫たちは必要に応じて二足歩行する際、&ruby(ニャウォーク){二足歩行猫};形態と猫耳尻尾つき人間の形態を好みで使い分けていたが、
後者の形態を利用する際にいくつかのトラブル((一番多かったのは人間に変化する際に姿を借りた相手が、サボっているなどいわれの無い叱責を受けたというものだったとされている))が発生したためこれを封じることにしたという経緯が語られている。
後者の形態を利用する際にいくつかのトラブル((トラブルの具体的な内容について公式に語られた資料は現存していないが、一番多かったトラブルは人間に変化する際に姿を借りた相手がサボっているなどいわれの無い叱責を受けたというものだった、という噂が政庁内などではまことしやかに囁かれている))が発生したためこれを封じることにしたという経緯が語られている。
涼州猫の猫としての姿は、猫の神様としての修行が進むにつれて大型のものとなり、最大では5mを超えるものも存在する。
術の中でも初歩的な&ruby(ニャウォーク){二足歩行猫};形態変化を会得した程度であれば2m前後のものが平均的である。
この形態ではそのサイズから生み出される強靭な膂力や瞬発的なスピードなど、肉食獣としての猫の特質が遺憾なく発揮されるが、
その肉体を維持するために要するエネルギー＝食糧の量は必然的に大きくなってしまう。
そのため&ruby(ニャウォーク){二足歩行猫};形態変化とほぼ同時に小型化の術も習得し、
日常生活におけるエネルギー消費を抑えるというのが一般的なカリキュラムであると考えられている。
そんな涼州猫たちも普段は怠惰と平和をこよなく愛するのんきな生活を送っているが、
いざという時には猫独自の情報ネットワークを介して行動し問題を解決することも多い。
そんな彼らの活躍を直接目にする者は少ないが、影に日向にこの藩国を守る存在としての認識は広まっており、
前足にブレスレットをはめた猫は市民から敬意の対象としてみられているようだ。
RIGHT:（文：よっきー）
RIGHT:（絵：可西）
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**猫の守り [#i99f1ff7]
#ref(1161.jpg,right,around)
涼州藩国が、未だ悪童同盟とヲチ藩国の二国であった頃からの話である。
悪童同盟には、たくさんの猫がいた。
それはもうどこから来たのかわからないくらいのたくさんの猫である。
猫が、当時の同盟藩主・悪童屋とどういう約束を交わしたのか、それはわからない。
ただ、その頃からずっと猫たちは自分なりの方法で国を守り続けているのである。
時は流れて、二つの国が合併し、涼州藩国という名を得てもそれは変わらなかった。
シルヴィという猫がいる。
元は王猫という立派な肩書を持つ猫であったが、涼州藩国が帝國に籍を置くことになった時に王猫ではなく王犬が戴かれたため、その任を去ることになった猫である。
シルヴィはしかし藩王に似たのか、もともと放浪するのが好きであったし、身分などにもこだわらない性格であったためそんなことはどうでもよかった。
だって彼は猫である。
猫には権力も身分もない。ただ気に入った場所でごろんちょする、そしてなでてもらう。それを守るために戦うことはあってもそれ以外は風の向くまま気の向くまま。それが猫である。
シルヴィもその例にもれず、肩書きなどはどうでもよかったがこの国自体は気に入っていた。猫も犬も好きなように暮らせるこの国を。
しかる故に、シルヴィは手の届く限り守ってやろうと、そう決めている。
そして、先に述べたとおりこの国にはそう決めて国を守ろうとしている猫がたくさんいた。
彼らの想いは、やがてとてもわかりやすい形で実を結ぶことになる。
シルヴィがあるとき路地裏をうろついていると、小さな人の姿をした何かがいた。
小神族、と政庁の人間が呼んでいた種族であろう、とシルヴィはあたりをつける。
何を隠そう、シルヴィはこれでも長く生きている。いわゆる、猫の神様と呼ばれる領域に足をつっこんでいた。
よって何を臆することもなく、シルヴィは小神族に声をかけた。
「小さき神よ、何かあったのか？」
「これはごきげんよう猫の神。特になにも。私は見回りをしているだけ」
なるほど、とシルヴィはふてぶてしくうなずいた。
小さき神もこの国を守っているのだろう。
「それは大儀だ。小さき神よ、我もともに見回ろう。背に乗るがいい」
「ありがとう、猫の神よ」
そうして二柱で国を見て回る。
どこも活気があり、平和そうに見えた。
「ここはよい国ですね」
「ああ」
と、その時である。
「きゃーっ！！！ だれか、ひったくりよー！！！」
耳をつんざくような悲鳴と、ばたばたという足音。
いくら平和な国ではあっても、こういうトラブルはなくなることはない。
「ふむ。追うか」
「ええ」
シルヴィと小神族は一瞬のためらいもなく逃げた人影を追った。
視界の端に、次々と走り出す猫たちの影も見える。
「この国には本当に猫神族がおおいのですね」
「この国は猫が気に入りやすい」
そう言っているうちにも、追いかける猫の数は増えており、いつの間にか、猫の包囲網がひったくり犯を追い詰めていた。
「な、なんなんだこの猫どもは…！」
「そこまでだ、悪党よ」
シルヴィはおもむろにすっくと二本足で立ち上がり犯人に迫った。
小神族は落ちかけて、あわててシルヴィの頭に移動する。
「我らは涼州猫。夜の闇とともに涼州の平和を守るもの。我らの目の前で悪事ができると思うな」
いつの間にか周りにいた猫たちは全て二本足で立っている。
その猫たちの腕にはきらりとわっかが光っていた。
「ひぃぃ」
すっかり腰の抜けたひったくり犯から荷物を取り戻し、シルヴィは悠々と歩き出した。
こうして、また一つ国の平和は守られたのである。
「猫の神よ、人のように歩けるのですか」
「我らは努力と、神々のちょっとした助けによって二つの足で歩けるようになった。たまに、人の要請を受けて機械にも乗る」
「すごい」
小神族の感嘆の声を受けて、シルヴィは尻尾を一度だけゆらりとさせた。
RIGHT:（文：奥羽りんく）
RIGHT:（絵：可西）
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