正方形のクリスマス

オープニング †

　涼州藩国では、クリスマスにあわせて東部・西部両地域の住民の交流を目指したイベントが企画、実行された。
　藩国政府は正方線の全線解放を行い、連動して四つの主要駅のある地域を中心として、地域ごとに異なるイベントが開かれることになった。東北部の王城前、露店市場では賑やかなお祭りが行われ、一方北西部平和記念公園では雪だるま造りや炊き出しが行われた。また、南西部都市部では子供達向けの大規模なお泊まり会が行われ、南東部砂漠地帯では居住区を中心に交流体験、食事会や星空観察が行われた。

　ここでは、黒霧が実際にその場で見てきた様子を書き綴ってみようと、思う。

／＊／

「というわけなんだけど、一緒に来ませんか？」
　バイブルサイズの手帳を閉じ、万年筆と共にウエストバッグにしまい込む。それから黒霧はのんびりした口調で、足下の白い姿に問い掛けた。
　白い猫が、足下にすりついてきている。リボンを首輪代わりにしたその猫は、呼びかけにこたえるように上を向いた。
　ホワイトスノーというのが、猫の名前である。
　正方線北東部の改札ホーム前。クリスマスの日の間だけ、無料で行き来できるようになっている地下鉄の改札内はずいぶんと賑わっている。改札員は何故か皆サンタクロースの格好をしており、カラフルな風船やトナカイ型にカットされたスタンプラリーの紙を配っている。
　これからどこに行くのか。露店市場のお祭りか、公園の雪祭りか。南部地域の交換お泊まり会に参加している人々は、もうとっくにそれぞれの場所にいるはずだから、ここにいるのはどちらも北部のイベント参加者のはずである。
　子供の手を引く親子連れを眺めつつ、黒霧は少し屈み、腕を伸ばした、自分の肩をとんとん、と叩く。
　ホワイトスノーがじっと見上げる。
　と、次の瞬間。ぴょんと飛び上がると、黒霧の肩に乗り上がった。
「夏の園ならともかく、この人混みだとさすがにはぐれそうですからね」
　そう言うと、一人と一匹はのんびりと外に出て行った。

　まずは北東部、王城前の露店市場で開かれているお祭りである。


北東部へ
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Last-modified: 2008-12-27 (土) 00:57:36 (5598d)