エンディング †

　正方線全線解放に端を喫する涼州藩国クリスマス巡り。
　その感想は、
「寒いところと暖かいところだった」
　一通り見て回った黒霧の感想は簡潔に過ぎてあまりに使い勝手が悪かった。もうちょっと何かいえん物だろうかと思うが、もとより感想言う能力に関しては人類の底辺にへばりつくこともおこがましいレベルであったりする。
　それはそれとして、正方線を使って移動し、環状線改札ホームまでやってくると、黒霧は改札前で立ち止まった。まだ人気のない静かなホームを眺めていると、ホワイトスノーが横から抜けていく。猫って乗れるのかな、と思いつつも、ホワイトスノーはするするとホームに向かって行ってしまった。
「それじゃ、また」
　軽く手を挙げる。
　尻尾が、一度だけ揺れた。

／＊／

　涼州藩国では、クリスマスにあわせて東部・西部両地域の住民の交流を目指したイベントが企画、実行された。
　元々二国が合併してできたこの藩国は、涼州山脈を境に東西で完全に環境が別れており、両者にどうやって交流の場を作る事が求められていた。今回のイベントはその一環として発表され、実施された。

　勿論。そんな裏の話は、やっぱり裏だけの話である。

　黒霧はそこまで手帳に書き込んで、万年筆を動かす手をわずかに止めた。
　小さく息を吐く。白い煙のような息が、闇夜に混じって溶けていく。
　黒霧は続きを書いた。

　現実では、それは、こう書かれる。

「彼らは仲良くクリスマスを過ごしましたとさ」

　おわり。





正方形のクリスマス
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Last-modified: 2008-12-27 (土) 01:05:38 (5591d)