奥羽りんく結婚披露イベント特設ページ/結婚前夜4-2
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[[奥羽りんく結婚披露イベント特設ページ]]
-花嫁の場合-
悪童屋が思いをめぐらせていた頃、当のりんく達は王城の一...
白を貴重とした、簡素ながら造りと品質の確かさを感じさせ...
ベッドとテーブルぐらいしかない手狭な部屋だったが、城内...
手狭なのには理由がある。
そもそもこの部屋、一人用だった。
婚前だからケジメをつけようと部屋は二つ用意されていたが...
それに狭い国では行ける場所にも限りがある。
結果、生活の大半をテーブルを前にベッドで二人並んで日中...
奥羽りんく――灰色の髪が印象的な娘が、器用にリンゴの皮を...
隣に座った三十絡みの無精ヒゲ――奥羽恭兵は、本気で手持ち...
恭兵の職業は傭兵だ。だから平和な場所は性に合わない。
大なり小なり危険があれば気を張ってもいられたが、悪童屋...
流石に結婚式を控えた身で戦場に赴くわけにもいかず、もし...
そんな恭兵に、砂糖をまぶしたような弾む声がかけられる。
「恭兵さん、リンゴの皮むけましたよ」
りんくはフォークに刺したリンゴを手に、恭平の顔を見上げ...
「あぁ、ありがとう」
反射的にフォークを探し、最近使わせてもらっていないこと...
幸せの代償はあまりに大きく、恭兵は今日もどういう表情を...
「はい、あーん」
「あーん」
口中に広がる甘酸っぱい味。かじりとり、ゆっくり咀嚼して...
親バカの藩王がツテを使って森国人と取り引きしてきたリン...
愛情が最大の調味料という実感もある。空腹で飲んだ水とは...
だが何とはなしに退屈だった。こういう状況を全力で楽しめ...
「恭兵さん、どうかしたんですか？」
「お前と同じ気持ちでこういう生活を楽しむには、どうしたら...
「やっぱり……戦場に、行きたいですか？」
恭兵が言うと同時、りんくの表情がかげる。
感情がすぐに表情に出るりんくの子供っぽさは、恭兵の苦手...
嫌なのではない。素直すぎて眩しく感じるだけだ。
「そうじゃない。その辺の割り切りはできてるつもりだ。けど...
「お父様と、二人きりでですか？ わたしだったらガチガチに...
りんくが苦笑し、二口目のリンゴを差し出してくる。
きっとそれは偽りのない本音だろうと、リンゴを味わいなが...
悪童屋四季――あの男はどれだけ優しい顔をしていても、絶対...
愛情や友情に嘘があるわけではない。ただ、恭兵と同じよう...
そして常に、そこに抗うことだけを考えている。
「夜中に時間が空いたと呼び出されてな。ボトルを挟んで、今...
りんくがどういう経緯であの男と親子の契りを交わしたのか...
普通、怖いものからは逃げる。それを遠ざけないのは勇気だ。
それがあっても何の役にも立たないが、それがなくては何も...
俺の勇気は残弾次第だと、肌身離さず持っている愛銃のこと...
りんくは銃を持たない女だ。それでも恐怖と戦える。勇気あ...
誰にも言いはしないが、りんくは恭兵の自慢の妻だった。
そう言ってやれば彼女が喜ぶことも分かっている。だが、恭...
「私からは、しない匂いですよね、それは」
冗談めかして自分の腕に鼻を近づけるりんくの雰囲気はどこ...
――あぁ、またか。
今日も失敗した。
子供は苦手だと嘯くこともできない。過敏なりんくに信用が...
こんな時、かつての彼女は全力でぶつかってきた。
自分の全力では彼女を壊してしまうが、思いを口にする勇気...
だが、何より彼女の涙が苦手なのは変えがたい事実だった。
「りんく」
「……はい」
りんくが肩をびくりと震わせる。
何も言わず、その肩を抱き寄せてベッドに倒れこんだ。
「きゃっ？！ きょ、恭兵さん、くすぐった――」
首筋に顔を押しつけ、りんくを抱きしめる。
彼女からリンゴの匂いがする気がした。
「お前は器用な奴だな」
「な、ななな、何が、ですか？」
りんくの鼓動が激しい。服ごしに伝わるリズムと体温に、恭...
「相手を押し倒して喋りまくるようなことは、やっぱりマネで...
「あ、そ、それは勢いとか、色々あって！ あの日は、特別だ...
「俺は不器用でな。どうしたらお前が安心するかも未だによく...
抱きしめるだけで安心を得られる自分と、そばにいるだけで...
アンフェア、いいじゃないか。優位条件を生かして勝ってこ...
勝敗、生き死に以外の大事なモノを持ってしまった。その自...
恭兵は勇気を大盤ぶるまいし、誰も見ていないことだけを担...
「どうすればいい？ 戦場に行かないだけじゃあ、これからも...
返事はない。
永遠にも近い数秒が流れる。
彼女の鼓動の速度が乗り移ってくるようだった。耳の奥で脈...
胸に触れる柔らかい体が、どんどん熱くなってゆく。
ふっとりんくの気配が緩んだ。
恭兵の髪に彼女の手が触れてくる。
落ち着いた空気とは裏腹に、なぜか彼女の鼓動は速くなり続...
「その……リンゴの味とか教えてくれると、いいとおもいます」
「それは、つまり？」
「はい。……そういう、ことです」
あまりの直球に面食らいながら、恭兵は顔を首筋から離す。
見下ろしたりんくは、恭平の瞳をじっと見返してきていた。
リンゴの味――二人の気持ちが通じた日、恭兵はりんくの剥い...
その後、紆余曲折あってキスをした。
そして恭兵は今の今までリンゴを食べていた。
それだけの話だ。
思わず笑みがこぼれた。
「お前はまだまだ子供だな。もっと多くを望んでもいいんだぞ...
「子供でいいですよ。夢見がちで歯止めの利かないままじゃな...
「それに？」
「知らないんですか？ 女の子は、甘いものとか果物が大好き...
そう言うりんくの顔は耳まで真っ赤だった。声も裏返ってい...
自分で言って、自分で照れてどうする。
いつもなら言ってしまう無粋なツッコミを飲み込み、恭兵は...
互いの吐息の混じる距離。りんくの唇が期待に震えた。
だが――
唐突に内線のコールが鳴り響いた。
りんくが目を開く。恭兵は苦虫を噛み潰して受話器を睨んだ。
無粋な奴もいるもんだと、日頃の行いを棚にあげて身をおこ...
「はいもしもし」
受話器を手に取り、不機嫌な声をあげる。
腕の中のりんくは嬉しそうに笑っていた。
CENTER:（文：松）
終了行:
[[奥羽りんく結婚披露イベント特設ページ]]
-花嫁の場合-
悪童屋が思いをめぐらせていた頃、当のりんく達は王城の一...
白を貴重とした、簡素ながら造りと品質の確かさを感じさせ...
ベッドとテーブルぐらいしかない手狭な部屋だったが、城内...
手狭なのには理由がある。
そもそもこの部屋、一人用だった。
婚前だからケジメをつけようと部屋は二つ用意されていたが...
それに狭い国では行ける場所にも限りがある。
結果、生活の大半をテーブルを前にベッドで二人並んで日中...
奥羽りんく――灰色の髪が印象的な娘が、器用にリンゴの皮を...
隣に座った三十絡みの無精ヒゲ――奥羽恭兵は、本気で手持ち...
恭兵の職業は傭兵だ。だから平和な場所は性に合わない。
大なり小なり危険があれば気を張ってもいられたが、悪童屋...
流石に結婚式を控えた身で戦場に赴くわけにもいかず、もし...
そんな恭兵に、砂糖をまぶしたような弾む声がかけられる。
「恭兵さん、リンゴの皮むけましたよ」
りんくはフォークに刺したリンゴを手に、恭平の顔を見上げ...
「あぁ、ありがとう」
反射的にフォークを探し、最近使わせてもらっていないこと...
幸せの代償はあまりに大きく、恭兵は今日もどういう表情を...
「はい、あーん」
「あーん」
口中に広がる甘酸っぱい味。かじりとり、ゆっくり咀嚼して...
親バカの藩王がツテを使って森国人と取り引きしてきたリン...
愛情が最大の調味料という実感もある。空腹で飲んだ水とは...
だが何とはなしに退屈だった。こういう状況を全力で楽しめ...
「恭兵さん、どうかしたんですか？」
「お前と同じ気持ちでこういう生活を楽しむには、どうしたら...
「やっぱり……戦場に、行きたいですか？」
恭兵が言うと同時、りんくの表情がかげる。
感情がすぐに表情に出るりんくの子供っぽさは、恭兵の苦手...
嫌なのではない。素直すぎて眩しく感じるだけだ。
「そうじゃない。その辺の割り切りはできてるつもりだ。けど...
「お父様と、二人きりでですか？ わたしだったらガチガチに...
りんくが苦笑し、二口目のリンゴを差し出してくる。
きっとそれは偽りのない本音だろうと、リンゴを味わいなが...
悪童屋四季――あの男はどれだけ優しい顔をしていても、絶対...
愛情や友情に嘘があるわけではない。ただ、恭兵と同じよう...
そして常に、そこに抗うことだけを考えている。
「夜中に時間が空いたと呼び出されてな。ボトルを挟んで、今...
りんくがどういう経緯であの男と親子の契りを交わしたのか...
普通、怖いものからは逃げる。それを遠ざけないのは勇気だ。
それがあっても何の役にも立たないが、それがなくては何も...
俺の勇気は残弾次第だと、肌身離さず持っている愛銃のこと...
りんくは銃を持たない女だ。それでも恐怖と戦える。勇気あ...
誰にも言いはしないが、りんくは恭兵の自慢の妻だった。
そう言ってやれば彼女が喜ぶことも分かっている。だが、恭...
「私からは、しない匂いですよね、それは」
冗談めかして自分の腕に鼻を近づけるりんくの雰囲気はどこ...
――あぁ、またか。
今日も失敗した。
子供は苦手だと嘯くこともできない。過敏なりんくに信用が...
こんな時、かつての彼女は全力でぶつかってきた。
自分の全力では彼女を壊してしまうが、思いを口にする勇気...
だが、何より彼女の涙が苦手なのは変えがたい事実だった。
「りんく」
「……はい」
りんくが肩をびくりと震わせる。
何も言わず、その肩を抱き寄せてベッドに倒れこんだ。
「きゃっ？！ きょ、恭兵さん、くすぐった――」
首筋に顔を押しつけ、りんくを抱きしめる。
彼女からリンゴの匂いがする気がした。
「お前は器用な奴だな」
「な、ななな、何が、ですか？」
りんくの鼓動が激しい。服ごしに伝わるリズムと体温に、恭...
「相手を押し倒して喋りまくるようなことは、やっぱりマネで...
「あ、そ、それは勢いとか、色々あって！ あの日は、特別だ...
「俺は不器用でな。どうしたらお前が安心するかも未だによく...
抱きしめるだけで安心を得られる自分と、そばにいるだけで...
アンフェア、いいじゃないか。優位条件を生かして勝ってこ...
勝敗、生き死に以外の大事なモノを持ってしまった。その自...
恭兵は勇気を大盤ぶるまいし、誰も見ていないことだけを担...
「どうすればいい？ 戦場に行かないだけじゃあ、これからも...
返事はない。
永遠にも近い数秒が流れる。
彼女の鼓動の速度が乗り移ってくるようだった。耳の奥で脈...
胸に触れる柔らかい体が、どんどん熱くなってゆく。
ふっとりんくの気配が緩んだ。
恭兵の髪に彼女の手が触れてくる。
落ち着いた空気とは裏腹に、なぜか彼女の鼓動は速くなり続...
「その……リンゴの味とか教えてくれると、いいとおもいます」
「それは、つまり？」
「はい。……そういう、ことです」
あまりの直球に面食らいながら、恭兵は顔を首筋から離す。
見下ろしたりんくは、恭平の瞳をじっと見返してきていた。
リンゴの味――二人の気持ちが通じた日、恭兵はりんくの剥い...
その後、紆余曲折あってキスをした。
そして恭兵は今の今までリンゴを食べていた。
それだけの話だ。
思わず笑みがこぼれた。
「お前はまだまだ子供だな。もっと多くを望んでもいいんだぞ...
「子供でいいですよ。夢見がちで歯止めの利かないままじゃな...
「それに？」
「知らないんですか？ 女の子は、甘いものとか果物が大好き...
そう言うりんくの顔は耳まで真っ赤だった。声も裏返ってい...
自分で言って、自分で照れてどうする。
いつもなら言ってしまう無粋なツッコミを飲み込み、恭兵は...
互いの吐息の混じる距離。りんくの唇が期待に震えた。
だが――
唐突に内線のコールが鳴り響いた。
りんくが目を開く。恭兵は苦虫を噛み潰して受話器を睨んだ。
無粋な奴もいるもんだと、日頃の行いを棚にあげて身をおこ...
「はいもしもし」
受話器を手に取り、不機嫌な声をあげる。
腕の中のりんくは嬉しそうに笑っていた。
CENTER:（文：松）
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