●猫の決戦存在
厳しい環境は、魂に贅肉をつける事を許さない。
藩王は質実にして剛健、剛毅にして朴訥なる者を求める。
だからこそ。
悪童同盟に住む者達は、普段目に見えないものを感じ取れる瞬間がある。
例えばそれは神と呼ばれ、時には別の何かとして捉えられるモノだ。
悪童同盟には多くの猫が存在する。
種類も年齢も多種多様、放っておいたら猫の国になったというなんとも言いがたい短い歴史がある。
多くは猫妖精とよき友であり、猫達は国民を愛するよき者ばかりだった。
だから、戦乱の続く世界の片隅、大国がくしゃみをすれば飛んでしまうようなこの国を、どうにか守りたいと願う猫も多くいた。
そんな猫達の中から、いつしか神と呼ばれる者が生まれ部下を使役しだした。
一匹では届かぬ闇を見通すために、猫が猫達として戦う事を覚えた結果だ。
ソレは国を愛するが故に生まれた、より多くを守るための強固なシステム。
また別の所では、己の飼い主を守りたいと願うが故に『何か』に選ばれる猫がいた。
大事な誰かの膝を守るためだけに、猫のまま猫には成せぬ事を成してしまう者。
空を仰いで顔を洗うだけで人を微笑ませてしまう、あるだけで大事な誰かに勇気を与える者。
それこそを猫の決戦存在と、誰かは呼んだ。
誰が呼び始めたのかは分からない。事実がどうなのかも不明だ。
だが、その者達は確かに、大好きな飼い主の、お日様の匂いのする膝を守りたいと願っている。
12匹の猫と、一匹の神と。その中のどれか一匹かもしれないし、全てかもしれない。
どこまでも普通の猫でありながら、人知れず奇跡を起こす彼らは総じて青い瞳をしている。
餌を食べて散歩をし、時に喧嘩して人々を和ませる彼らは、人間同士の衝突を苦笑いに変えるような魅力を持っている。
猫だけが持つ不思議な力、そういう遠まわしなものが国を危機から遠ざける。
微笑みは何にも勝る薬だと、彼らは振る舞いで表現してしまうのだ。
感謝のしようもなく、その偉業を知ることすらできず。
それでも悪童同盟の国民は、猫のイタズラに寛容で、飼い猫でない分の餌まで用意する癖があり。
なぜか『猫の瞳は青いものだ』と、国民達はどんな猫を見ても口を揃えて言うのだ。